国連「生命の水」優秀賞受賞に学ぶ視察
国連は、2005~15年を「生命の水10年」と定め、安全な飲料水を継続的に利用できない人の割合の半減することをめざしています。
国連が定めた「世界水の日」にあたる3月22日、熊本市が「国連 生命の水 最優秀賞(水管理部門)」を受賞。
熊本市における上水道の仕組みや水管理の在り方の視察のため、北区八景水谷1丁目にある「水の博物館」を訪問しました。
水の博物館
建物の周囲を外池で囲み、中池にテラスと遊水池が設けてあるこの「水の博物館」は、市民や子ども達が、楽しく学べるように様々な工夫が施されています。
雨に見立てたボールを阿蘇に降らせ、そのボールがどのように地下にしみ込み、農作物を成長させ、どのような経路を通って水源地にいくのかが楽しく学べるようになっています。
また、泥水のろ過装置やペットボトルを使った水の実験室もあり、汚れた水がきれいになっていく仕組みが体験できるようになっています。
熊本市上下水道局の水運用課長によれば、熊本市の水道は、大正13年の給水開始以来、水源の全てに地下水を使用しており、人口50万人以上の都市で、水道水の全てを地下水でまかなっているのは熊本市以外ないということにまず驚きました。
阿蘇山系に降った雨は、有明海に注ぐ白川中流域の大津町や菊陽町の水田などから大量の水が浸透し地下水となっています。
熊本市は、2004年、両町や地元土地改良区等と協定を結び、米の生産から別の作物の生産に切り替えた「転作田」で、収穫後等、農作物が育っていない時期に水を張ってもらう事業を始めています。
水を張る時期に応じて土地所有者に市が助成金(10アールあたり、1ヶ月1万1千円、耕作放棄地は対象外)を支払い、近隣自治体と協力し、質の高い地下水の保全に努めているということでした。
土地所有者にとっては、収穫後の田畑に水を張ることで雑草が生えにくくなったり、害虫が減ったりする等、相乗効果があるという説明もありました。
今回の受賞は、熊本市が「地下水都市」であることを国内外にアピールすることができるとともに、市民に節水や地下水の維持に対する理解を深めてもらうきっかけになると担当者は、期待されていました。
次に、健軍水源地を視察しました。
阿蘇山系に降った雨は、森や田畑などから地下にしみ込み、約20年かけ、きれいでおいしい地下水となって熊本市へ流れてきます。
そして、江津湖や水前寺公園、健軍水源地等の井戸に湧き出てきます。
健軍水源地(取水井戸)
視察した健軍水源地には11本の取水井戸があり、熊本市で使われる水道水の内、約4分の1にあたる約6万㎥を賄っているそうです。
井戸からくみ上げられた地下水は、排水ポンプ場で滅菌された後、近くの配水池を経由して市内へ送られます。
震度6弱以上の大地震発生を想定し、配水菅破損による水の流出防止や緊急給水栓等、災害対策への対応もしっかりと整備されていました。
熊本と言えば「火の国」、というイメージがありますが、阿蘇山系に降った雨による地下水を近隣自治体との協力のもと生活水に活用し、自然と共生する「水の都、森の都」と言えます。
福岡市の都市圏を流れる河川は、室見川や多々良川をはじめとする2級河川はあるものの、いずれも流域面積や流量とも小さく、これまで筑後川からの広域利水やダム建設によって水資源の開発により生活水の確保に努めてきています。
しかし、1978年や1994年の記録的な少雨による大渇水を経験し、水資源開発と安定供給は大きな課題となっています。
そのため、福岡市では節水対策は当然のごとく、都市圏の水不足対策として、新たな水資源を海に求め、福岡地区水道企業団が事業主体となった「海の中道奈多海水淡水化センター」(まみずピア)を建設し、2005年に供給を開始しました。
その生産水量は一日最大5万㎥とされ、福岡市近隣の自治体にも供給されています。
熊本市は水を地下水に求め、福岡市は筑後川と海に求める、と違いはあるものの、「節水型都市づくり」をめざさなければならない点は同じであり、最近の地震や風水害を考えれば、今後も災害・危機管理対策の充実も図っていく必要もあります。