福島県視察(1日目)
東京電力福島第一原発事故後の福島県における「放射能汚染に関する健康管理調査の状況」や「自治体の復旧復興に向けた取り組み」等を視察するために、2月1日(水)~3日(金)福島県に行ってきました。
2月1日(水) 福島県立医科大学
○放射能汚染に関する福島県民の健康管理の状況について
(福島県立医科大学 放射線医学健康管理センター副センター長 安村 誠司教授)
東京電力福島第一原発事故により、県民の健康に対する不安が増している。
とりわけ、チェルノブイリ原発事故後に放射性ヨウ素の内部被ばくによる小児の甲状腺がんの実態が明らかになっていることもあり、子どもたち本人はもちろん保護者に不安が広がっている。
また、放射線量は低いものの長期にわたる放射線被ばくを受けることになり精神的な苦痛、近親者を亡くしたり家や財産を失ったり、恐怖体験をしたことなどによる心的外傷を負った県民が多くおられる。
そのため、福島県で約200万人の全県民を対象に、原発事故後の健康状態の把握や不安解消を目的に県民健康管理調査を昨年10月より実施している。
調査は「基本調査」と「詳細調査」の2段階あり、基本調査では自己記入式の問診票を送付、3・11以降の行動を記録し滞在場所などから個人の被曝線量を推計する。
詳細調査では、18歳以下の子どもの甲状腺検査のほか、全ての妊産婦に問診票調査を実施。
また、避難区域に指定された地域の住民には健康診断を行うほか、避難生活が精神面や生活習慣に与えた影響も調べることとしている。
甲状腺検査は昨年10月、まず飯館村等比較的線量の高い地区の18歳以下の約2万人を対象に始まり、今年度中に8割が検査を受ける予定。
甲状腺がんは早くても被曝後4年経たないとできないので、それまでは現状把握のための検査だという。
これらの県民健康管理調査は、国の基金を活用し、県立医科大学が中心となって実施されているが、18歳以下の子ども約36万人を生涯にわたってチェックする世界初となる健康調査であることから、財源的にも息の長い事業になるため、国の財政的な支援とスタッフの確保・専門医や検査技師等の人材育成が必要である。今でも事務局スタッフが足りず、現在県外より15自治体22人の応援職員が派遣されているが長期にわたる調査支援になるため、多くの自治体からの支援も必要である。
また、県外へ避難した子どもたちも数多く、所在が分かっている世帯には検査案内等を郵送しているが、転居先を把握できないケースもあり、各自治体やホームページ、各医師会を通じて受診を呼びかけるなど広報と周知も必要である。
さらに県外に避難中の子どもたちが検査を受けやすいような体制づくりも急務である。
1.基本調査
<対象>
・全県民
<方法>
・自記式質問票(郵送)
2.甲状腺調査
<対象>
・18歳以下全県民
・2011年10月~2014年3月
・2014年4月以降は20才までは2年毎に調査がされる。
<方法>
・超音波検査
3.健康診査
<対象>
・警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域の住民
<方法>
・就学前、小中学生、16歳以上の3段階の年齢区分で実施
4.こころの健康度・生活習慣調査
<対象>
・避難区域住民
*こころのケアが必要と判断された場合は「こどものこころ診察センター」心身医療科が対応する。
<方法>
・自記式質問票(郵送)
5.妊産婦に関する調査
<対象>
・2010年8月~2011年7月までに母子手帳を交付された方(約1.6万人)
<方法>
・自記式質問票(郵送)
県民から郵送されてきた各調査票を評価・分析し相談、支援の必要がると判断された方には「こころの健康支援チーム」が電話相談等を行う。
この部屋の奥に電話相談コーナーが設置してある。
福岡県から派遣された井上さん。
各地から回収された調査票
ホールボディカウンター
内部被曝線量を調べるために、人間の体内に摂取され沈着した放射性物質の量を体外から測定する装置。原発事故当時、数人の作業員がヘリコプターで運ばれ治療を受けたという。